2018年からちょうど4年ぐらい前の事です。平尾昌晃さんの楽曲使用の許諾と金額交渉を行いに、六本木にある平尾昌晃音楽事務所にお伺いしました。
その時交渉の相手が、現在世間を賑わせている平尾昌晃さんの三番目の妻である平尾三枝さんでした。
今回の遺産相続騒動に対して思う事
この騒動がニュースで流れたとき、一緒にお仕事をした方だった為報道の行方を見守っていました。平尾昌晃さんは日本を代表する作曲家なので、遺産争いとなればワイドショー恰好のネタでしょうが、個人的にはそっとしておくのが一番関係者の為になるのでは無いかと思います。
したがって、今回の記事でどっちが良い悪いと提言するつもりは無く、私が平尾三枝さんと平尾昌晃さんとお話する中で感じた印象から、今回の騒動を冷静に見つめてみたいと思います。願わくば、メディアとは違う1つの考えと受けていただき、比較いただければ幸いです。
平尾三枝さんについての印象
仕事を進める中で、平尾三枝さんはとても気さくで、平尾昌晃さんの楽曲を大切に守られている印象を受けました。
気さくにアメやお菓子を勧めてくる

私も作曲家の端くれですから、偉大な作曲家の事務所を単身で訪れる事に緊張していました。しかし平尾三枝さんはそれを察してか、「名古屋から大変だったでしょう!新幹線の中で食べて食べて!」とアメやお菓子を頂きました。一気に緊張がほぐれ、交渉に移行できた事を今でも覚えています。
平尾昌晃さんの価値を大切にしている
多少専門的な話をすると、私の業種で楽曲使用許諾(平尾昌晃さんの曲を使っていいという許可)を頂くには金額交渉が必要でした。(普通はJASRACの規定料金が決められている)
平尾昌晃さんの楽曲を、どのようなシーンで使用するのか、発売日や販売期間は…などを説明し、最後に許諾料の話になりました。私は、「この業界の相場は大体これぐらいでして…」と金額提示したところ、平尾三枝さんは難色を示しました。
私も平尾昌晃さんの楽曲なので、相場よりは高いと踏んでいましたが、提示された金額は一回り大きな金額でした。私は「その金額では弊社の役員が納得するかどうか…」と交渉しましたが、平尾三枝さんは次のように言いました。
「おかげさまで平尾の楽曲は色々な企業様に使用いただいています。他の企業様も今回提示した金額で交渉頂いておりますし、御社だけ下げてしまうと楽曲の価値まで下がってしまいます」と先の気さくな表情から一転して真面目なお顔でお話されていました。
私はこのとき強い意志を感じました。一旦持ち帰り検討しますと伝え、後日メールや電話などで交渉しましたが、やはり最初に提示した値段から動きは無く、最終的には金額的な折り合いがつかず交渉に至りませんでした。
本来は駆け引きしたほうが得
正直、一度作った楽曲を使ってもらう事は作曲家や事務所に取って儲け話なのです。なぜなら、楽曲のデータを渡すだけで収益が見込めるからです。CDの増産に近い感覚ですね。(当然どのような使い方をされるが見定める必要はあります。)
そのため、なるべく値段を釣り上げるためにも駆け引きをした方が得なのです。最初は多めに提示して徐々に相手の納得するような金額まで交渉していく方が事務所側のうまいやり方です。
しかし、平尾昌晃さんの場合は違いました。最初から設定した金額から押しもせず引きもせず。値段の折り合いがつかないとなれば致し方なしという具合で交渉が終わりました。私は、平尾三枝さんがおっしゃった「平尾昌晃の価値を下げたくない」という言葉は本当のことだと思いました。

平尾昌晃さんの印象
平尾三枝さんとの交渉中、事務所の2階から降りてきた平尾昌晃さんと挨拶を交わしました。平尾三枝さんが私を紹介してくださり「先生、こちら○○さん。今度先生の楽曲を使用したいんですって」「ああ、これはどうも。権利の事は(平尾三枝さんを指しながら)任せてありますから、よろしくおねがいします。」と言いそのまま出かけられました。
平尾昌晃さんの言葉通り、楽曲の権利関係はすべて平尾三枝さんに任せている…という印象でした。平尾三枝さんは平尾昌晃音楽スクールの頃からの付き合いらしく、長年のパートナーであったみたいです。仕事の事から身の回りのことまで平尾三枝さんを頼っていた話もありますが、お見受けした感じを見るに噂通りだなと思いました。
平尾勇気さんについて感じた事
平尾勇気さんとは面識が無く、私の仕事の件でも関わりが無かったのでお人柄はわかりませんが、今回の騒動に関しても早速メディアが面白おかしく取り上げる様を見ると、メディア側の配慮にかけるのでは無いかと感じます。
見た目のみで言えば、金髪でヤンチャ(自身でも若い頃はヤンチャ…と言っていた)に見えてしまいますが、実際にアーティスト活動されている様子を見ると、努力をされた様子が伺えます。
(失礼ですが)見た目に反して歌うジャンルは歌謡ショーで平尾昌晃さんの影響を受けているようでした。人前で自分を表現しながら歌う様は簡単にできる事ではありません。

平尾昌晃さんを父に持つ感覚は、平尾勇気さんにしかわからず、偉大な父を持つプレッシャーがどのように強大なのかは想像が付きません。しかし、平尾勇気さんはそのプレッシャーを感じながらも自分の好きな道を選んだように思います。
真相は関係者しかわからないが…
私は、この騒動がボタンの掛け違いで済んでほしいと願っています。偉大な作曲家である平尾昌晃さんの功績を、悲しい物語で濁してしまってはあまりにも平尾昌晃さんが不憫です。
お仕事やお話をした平尾三枝さんの印象と、平尾勇気さんのアーティスト活動を見た印象を見るに、どちらも夫や父の事を思って今まで頑張ってきたのだと思います。
最後に
どうしてもこの手の話題は人々の興味を刺激してしまいます。今回はお仕事でご一緒させてもらった方でしたので個人的には和解を望んでいますが、全然知らない方同士の騒動なら興味を持ったと思います。
しかし、人の不幸や妬みが気になりながらも、本当は素敵なニュースを聞いていたほうが幸せなはずなのです。冷静に考えれば、この騒動でいくら私達が議論を繰り広げても得にならず、平尾昌晃さんの思い出が濁っていくだけなのです。
だったら、冷静な目でメディアを見てほしい。願わくば和解して平尾昌晃さんの楽曲が今後も輝き続けてほしい。そう思いながら今回の記事を作りました。
私達の思いが、明日の良いニュースを作りますように。
コメントを残す