パチンコは大当りの期待を盛り上げる為に音楽や効果音だけでなく音声も取り入れています。昔は音の制作者が自分で声を録って機械に入れていましたが最近のパチンコはほとんどアニメとのタイアップが多いので声も原作と同じ声優さんを使用します。(私も自分の声で「リーチ」とか言っていたなぁ…(思い出))
私は音に関わる全ての業務を担当しているため音声の収録にも立ち会います。そこではキャラクターを担当する声優さんに「もうちょっと強くお願いします」「もう少し怒った感情を入れてほしいです」とパチンコ台に乗った時を想像してお願いをします。
今回はこういった収録の仕事を経て感じた、「声優業界の危機」を書いていきます。声優ファンの方必見です。
声優は演じたキャラクターを忘れてしまっている?

「あれ…このキャラこんな事言ってたっけ…?」
多くの収録に立ち会うと声優や監督がキャラを忘れている事は割とあります。こちらとしては版元(アニメ制作を取り仕切る大元)に失礼の無い様にアニメを何回も見ているのでセリフ内容に間違いはほぼ無く「あ~、多分言っていたと思います~。」という感じで思い出してもらっています(笑)
パチンコ開発の性質上、3年ほど前のアニメを取り扱う
大体1機種の制作に1.5年~2年ほどかかります。大きな利益を生み出せそうなビッグコンテンツ(みんなが知っているようなアニメ等…)ですと、しっかりと制作しなければならないので3年以上かかるケースもあります。
つまり、どんな最新のアニメでも収録までの時間が空いてしまうので声優がキャラを忘れてしまうのも無理はありません。
直近の作品や出世作しか覚えていないのかも…
声優は1つのアニメだけ担当している訳ではありません。同じ期間内に違うアニメの声を担当したり、CMナレーションの収録をしたりと様々な声の仕事を複数行っています。
アニメに置いても主人公クラスを担当することもあれば端役(1話で終わってしまうキャラ等)担当のときもあります。私達が思っている以上に声優は様々なキャラクターを担当しているのです。
声優も人間ですから長年愛され続けているアニメのキャラクターは思い入れもあるでしょうしリメイクやスピンオフ作品も作り続けられているのでキャラクターを忘れるわけにはいきません。
あまりにも多忙な人気声優のスケジュール

1年先までスケジュールが埋まっている…なんてバリバリのビジネスマンみたいな仕事量を声優はこなしています。
例えば毎週のアニメで5本レギュラー(主役級)を担当する声優は週に5つのスタジオに出向かなければなりません。(スタジオや時間がまとまっている場合もありますが…)5本のレギュラーを務める程の声優は人気でしょうからナレーションや映画吹き替えなどの仕事や雑誌のインタビュー、LIVEやPR活動も行います。台本の練習やスケジュールの打ち合わせも等もスケジュールに含まれる事を加味すると1年先までスケジュールが埋まっていると想像ができます。
これではキャラクターを覚えていない可能性は大きいでしょう。キャラクターを演じ変えるだけでも大変ですし、その上すべてのキャラクターの細かいところまで覚えていたらその声優は超人と言っても過言ではありません。
ファンと声優の距離が近くなり、ファンとキャラクターの距離が遠くなる声優業界
2010年ぐらいから、声優の職業としてのあり方が変わってきた実感があります。
昔は演じているキャラクターを見て「この声優はどういう人なんだろう…」と疑問をいだいていましたが、現在は声優の顔出しが頻繁になった為「○○さんが○○キャラの声を担当するんだ!」という見方ができるようになりました。これはファンと声優の距離が近くなった事に繋がります。
声優の顔出しやLIVEが当然になってきた

声優はあくまで「声だけの仕事」という考え方の時代がありました。
ドラゴンボールで孫悟空を演じる「野沢雅子」さんも、今でこそはTVに出て声優のお話をしてくれますがドラゴンボール放送時代は顔を見ることがなかったように思います。
今では声優を目指すにあたりルックスや歌なども重要視される時代になりました。声優の中にはさながらアイドルのような方もいらっしゃいます。
発声や芝居が多少下手でもルックスや歌が上手ければ声優としての人気が出てしまうという逆転現象も起こるほどです。
インターネットの普及により、アニメへの思い出の価値が下がってしまう
インターネットの普及でアニメのキャラクターが特別な存在ではなくなりました。
動画配信サービスの発展で古いアニメも簡単に見られるようになりましたし、キャラクターの情報や名シーンも調べればすぐに分かるようになりました。
いつでも好きなキャラクターを身近に感じられるという事は一見ファンとキャラクターの距離が縮んだようにも思えますが、私は逆に距離が遠くなったと考えます。なぜなら、身近にありすぎるのはアニメに対する思い出の価値が下がってしまうからです。
TVレコーダーが無い昔の時代、何かの都合でアニメ1話を逃してしまった悔しさは誰しも経験が有ることでしょう。それほどアニメは特別な存在だったと思います。何回も見たい時は、ビデオに録画するという現代では手間がかかってしまう行動がアニメへの情熱を表していたようにも思えます。
いつでも見られるアニメは「見過ごしてもいい」という気持ちになります。それより新しい情報が更新され華やかに紹介される声優の方に注目してしまうのでキャラクター(アニメ)の距離が遠くなってしまうと言えるでしょう。
キャラクターより声優のイメージが大事?
「このキャラクターを演じられて、本当に光栄に思います~!」
こんなテンプレートのような声優インタビュー、もう飽き飽きしてきませんか?
アニメのキャラクターですから多少ぶっ飛んだ設定もあるでしょう。人間らしい弱さもあれば欲にまみれた汚い部分もあるかもしれません。アニメをみて「おいおい、今のセリフ際どいな~」みたいなシーンもあるでしょう。そんな時、キャラを演じたいちばん身近な声優が「○○のキャラは、本当にアホでね~。このときはそりゃないだろ~って思いましたよ!ハッハッハ!」とアニメキャラにつっこんでくれれば、本当に好きで演じたのだなと思うでしょう。親近感がわきます。
しかし声優本人のイメージを崩してしまうと炎上してしまうのが現代流…。本人ですめばまだしも作品にも飛び火が及ぶ場合もあります。だからインタビューでも当たり障りのない感想を言ってしまうのだと思います。
本人イメージを大切にする俳優や女優と同じ様な立ち位置になってしまえば、もはや声優である必要は無くなるでしょう。

声優と声優業界はいつか潰れてしまう!?
ルックスがかっこいい・かわいい声優が大勢出てきて新たな市場を形成している声優業界も、今のまま続けていけば規模が縮小されていくのではないかと予想します。
巨大メディアから離れていくファンたち
ファンと声優の距離が近くなる最終形態が少数によるコミュニティの形成です。
インターネットの普及でプロで無くとも気軽に声を届けられる時代になりました。インターネットは直で声優との交流が可能なので例えばリクエストしたセリフをリアルタイムで喋ってもらえる…なんてことがあれば聞いているファンも感動が大きいでしょう。
少数によるコミュニティが流行りだせば、TVアニメやラジオなどの現行主体になっているメディアが薄れていくのも時間の問題です。
声優に求められる条件が厳しくなる
昔は発声と芝居が求められ、現在はルックスや歌唱力も求められる…。そして今後はもっと新しい一面を見せないとファンが少なくなってしまう…。そしてその次の世代はもっと…。このスパイラルに陥ると大変危険です。今後誕生する声優はこれ以上を兼ね添えた人じゃないと声優になれないかもしれません。
現実的ではない声優の条件に対して声優になりたい人が減っていくのでは無いかと思います。それより先程書いた「少数コミュニティー」を作るべくインターネットで声のコンテンツを作り出していく人が増えていくのでは無いでしょうか?
声優のストーカー被害!?段々明るみになれば目指す人も少なくなる!?
アイドルと同様、収録スタジオからの出待ちをしてプライベートを脅かされる例も少なくありません。そしてこれは声優の顔出しによる弊害だと思っています。
インターネットの普及はいい方向ばかりに向かず例えば「○○さんは月曜日、都内の○○スタジオ19:00から○○アニメの収録」という情報が普通に出回ります。
芸能人の様にマネージャーが付いていれば問題が無いように思いますが、意外にも声優は単独で行動している人の方が多いのです(よほどの大御所や事務所によって方針は異なります。)普通に電車移動でスタジオまで向かうので、出待ちが簡単に成功してしまうのです。
出待ちも、ミーハー心の延長な方もいれば熱狂的なファンで行き過ぎた行動になってしまう方もいるそうです。声優にとって好意的に話しかけてくれる方にはイメージを崩さないよう接しなければなりませんし、危険を感じたら逃げたり助けを呼んだりしなければなりません。これでは声優も疲れてしまうでしょう。
声優に多くを求めすぎないように

声優が顔出しし始めたことで芸能人と同じように見られがちですが、各声優にマネージャーが付くわけでもなく(芸能人も同じですが)我々社会人が普通に職場へ向かう感覚で「声を使って仕事をしている」人たちです。
アニメの向こうではかっこいい・かわいい声を出していつでも元気な声優ですが、仕事が終わればキャラクターから離れたいときもありますし、当然休みたいときもあります。
私達が声優にできる事などほぼありませんが、声優だから…特別な存在だから…と声優達に多くを求めすぎてしまえば日本の声優業界を潰してしまう事につながるかもしれません。
声のスペシャリストである声優の仕事内容が、もう少し本職に戻るように願うばかりです。
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