【世界初】スタプリ遼じいのオリジナルSS・小説「Restart Zero」

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前作「Restart」はこちらからお読みください(先にお読みいただくことをオススメします)

この世界は…もうダメだ。

ワシは今巨大なドラゴンに立ち向かっている。遠巻きに見れば鮮やかな朱色の鱗も近くで見れば灼熱を帯びた脅威に変化する。

多くの仲間もこのドラゴンにやられてしまった。残りはワシと数名の仲間たち。数の力では全く太刀打ちできなかった。

ドラゴンが大きく息を吸い込む。次で最後だ。ドラゴンから吹き出される荒れ狂う炎に仲間たちは為す術もなかったのだ。

最後の最後、ワシはケインの言っていた伝説のことを思い出したのだ。

「おーい!リョウじい!早く魔法を教えてくれよ!!」

またケインのやつがやってきた。

ケインはワシの戦友「エスターニア」の息子だ。戦地へ向かったエスターニアに「ケインのことを頼む」と言われたのでケインの面倒を見ている。本来ならケインも戦地へ赴くべき年齢なのだが、どうも戦士の素質が無いというか戦闘意欲が見られなく今回の戦闘は見送る形となったらしい。ケイン自信も戦闘に参加できなかったことを喜んでいるようだった。

我が国ディティーモと隣国バラミスとの争いは20年も続いている。戦局は拮抗状態で決着がつく様子もない。激しい戦闘の末命を落とした者も少なくは無い。当然政治的な交渉が幾つもあったが互いの折り合いがつかず、戦闘意欲を掻き立てる燃料にしかならなかった。

とは言え、ここ最近の戦いはお互いを威嚇する程度に収まっていた。戦闘に疲れる兵士達や戦争そのものに異論を唱える学者など…戦争の長期化は人々の心を冷静にさせた。このまま戦闘が少なくなれば争いは自然的に消滅していくものだと思う住人も多かった。みな、戦争の愚かさに気が付き始めたのだ。

しかし、とある事件をキッカケに戦闘の激化が進んだ。バラミスの若きリーダー「JG.クライ」がディティーモの住人を大量に襲ったからだ。

ワシはディティーモの民間戦闘部隊の魔道士を任されている。戦闘で傷を負った者の治療が主な仕事内容だ。今回の戦闘ではワシの友人「ハル」が戦地へ赴いておりワシは防衛兵としてこの地を守っている。基本的に戦闘は国までは行かず国同士の中間地点で行われる。互いの住民に危害が加えられないよう双国で決めたルールだった。

「早く!魔法だよ、ま・ほ・う!!」

ケインがしつこくワシに迫る。まったく…こいつは本当にどうしようも無いやつじゃ。

「ケインよ、お前はもうちっと父親を見習って戦士の修行をすべきじゃないのか?」

「やだよ!僕は父上のような戦士にはならないんだ!魔法を覚えてとびきり興奮する物語を書くのが夢なんだ!」

ケインはどうやら父親が持つ猛々しい性格を引き継いでおらず、母親譲りの優しくイマジネーションあふれる性格を持っていた。

「人々の心が楽しくないから戦争なんてものが起こるんだろ?僕がみんなを楽しませてあげれば、戦争をしている暇なんてなくなると思うんだ!」

「しかしなケイン、魔法というのは傷ついた人を治すためであって、ケインが思っているような興奮させる効果なんてないんじゃよ」

「え?魔法って空を飛べたりもうひとりの自分が作れたりするんじゃないの?」

「それは魔法を間違った方向へ発展させようとしている学者らの本を読んでそう思ったんじゃろ?彼らは治療を目的とする魔法だけでは面白みが無い…という理由だけで人々に間違った知識を与えようとしている悪い奴らなんじゃ。その証拠に空を飛ぶ事も自分を作る事もすべて戦争の手段として利用しようと考えているじゃろ?戦争をなくすことが目的のケインだって、魔法が戦争ために使われるのはイヤじゃろ?」

「そりゃそうだけどさ…。でも空を飛べるってすごいよ!ディティーモを上から覗いてみれば新しい発見があるかもしれないよ!?もしかすると、この世界を見張っている巨人がいて僕らを見て笑っているかもしれない!」

「なるほど、それは面白い想像じゃな!じゃあもうひとりの自分を作ったらケインはどうするんじゃ?」

「そりゃあもちろん、”僕は戦う気はありません!”って張り紙を自分自身に貼っつけて父上にアピールするさ!」

「アーッハッハッハ、おいおい!そりゃ自分のための魔法じゃないか!」

「へへ、まぁいいだろ?僕は沢山の人を楽しませたいんだ!だから魔法を教えてくれよリョウじい!」

やれやれ、ケインはこうなるとテコでも動かん。そのへんはエスターニアの血がしっかり流れてるようじゃ。

結局ケインに教えられることと言えば治療魔法のみじゃった。大空を飛び立てるような、あるいは自分の分身を作り出せるような魔法は教えなかった。正しくは、そんな魔法はこの世に存在しなかったのだ。

「ちぇ、結局治療する為の魔法しか教えてくれないんだから…」

「自分を、他人を治療できるなんて立派な魔法じゃないか。戦いに出られない者はせめて戦士の傷を癒やす役に徹するべきじゃ」

「あ~あ、リョウじいは本当につまんないんだから…」

「自分の仕事につまらんもつまるもないさ」

空を見上げると南十字星が輝いていた。戦地で戦っているエスターニアもきっとあの星々を見てケインの事を想っているに違いない。

「母上、ただいま!」

ケインは机に飾ってある首飾りを手に取りながらそういった。その後、魔法を教えないワシへの文句を続けた。

ケインの母親はJG.クライの凶行により命を奪われてしまった。ワシとエスターニア、そしてケインが実戦投入前の練習として戦地に赴いたときに起こってしまった悲しい事件だ。なんと、敵国のバラミスさえJG.クライの行動を把握しておらず双国完全にスキを突かれた状態での襲撃だった。

この事件はバラミスの将校たちの中でも賛否両論が飛び交った。戦争を推奨するものは今回の行動を讃え、命と文明の発展を願うものは非難した。しかしJG.クライの行動は間違いなくバラミスに優勢をもたらしたことに間違いない。この事実を突きつけられると、バラミスの将校たちは彼を懲罰することが出来なかったのだ。

「レイラさん。ケインは今日もたくましく生きていましたよ」

ワシは首飾りに話しかけた。気丈な態度をとるケインだが本当は悲しいに違いない。エスターニアに「男なら泣くな!」と言われた為その涙を見せることはなかったが、本当は胸が張り裂けるほど泣き出したかったに違いない。そしてそれはエスターニアも。

「リョウじい、送ってくれてありがとう。もう大丈夫だよ」

「そうか、じゃあワシはここで帰るからな」

ワシが扉を開けようとした時、ケインは思いつめたような声色でこういったのだ。

「リョウじい…Restartの魔法…知ってる?」

「Restart?」

聞いたことの無い魔法じゃった。架空の魔法が紹介されている魔導書ですら書いていなかった魔法だった。

なぜそんな魔法をケインが知っているのか分からなかったが、いつも見せないケインの表情に特別を感じたワシはケインを放っておけなかった。

「聞いたことが無い魔法じゃが…そのRestartがどうかしたのじゃ?」

「うん。僕も魔法の本で読んだだけで…流石にこの魔法はウソだと思うんだけど…。ちょっとだけ話しが長くなるけどいいかな?」

ワシは開けかけた扉を締めて、改めてケインの方を向いた。

「昔、今のディティーモとバラミスのような戦争をいている国があったみたいなんだ。今の僕たちと違うところは、敵は1人だけで、そいつが巨大な生物を飼っていて沢山の人々を苦しめていたみたいなんだ。そんな中、2人の女の子がその敵と生物に立ち向かった話からスタートするんだけど…」

「まてまて…。女の子…?といったのか?」

「うん、女の子2人。1人は漆黒の鎧をまとっていて、もう1人は純白の大きな布で体を覆っていたって書いてあったんだ」

話にしては飛躍しすぎている。いくらなんでも女の子が戦士なんて話は現実味に欠ける。戦いというのは力強い男性が行うものだ。女性を危険に晒すわけにはいかないじゃろう。

「最初、その2人は巨大な生物を押していたんだけど、敵はさらなる強力なパワーをその生物に授けたんだ。そこから形成は逆転したみたいで、女の子たちは倒される一歩手前まで追い詰められたみたいなんだ」

そりゃそうじゃ。訓練を受けていない女性にとって敵の脅威は凄まじい痛みが伴うだろう。物語だから許されるもののこの話はワシ達の世界ではいくらなんでも非現実的じゃった。

「で、そのRestartという魔法はどこに出てくるんじゃ?」

「Restartというのは異国の言葉で”やりなおし”って意味なんだ。女の子2人がいよいよやられそうになった時、仲間の魔法使いが最初からやりなおす為にRestartの魔法を使ったんだ。そうすると白い光に包まれて、その女の子たちは戦士になる前の状態に戻ったっていう話。」

「なぁにをバカバカしい…。そんな簡単に世界がやり直せるわけが…」

「まだ話は終わっていないよ。でその2人は戦士になる前の女の子に戻ったわけだけど、どうも敵や生物の記憶は残っているみたいなんだ。だからどうやってやられそうになったのか…などの戦闘中に発見した弱点が予め分かるようになったみたい。その状態で再び戦士になった。当然生物との戦いも行うことになったんだけど、さすがに2回目ということもあって簡単に生物を倒し世界の平和が守れた…というお話だったんだ」

真剣な表情で語るケインを見てその話を信じようと努力したが、ワシの頭ではついていけない世界だった。そもそも戦士が女性の時点でありえない世界なのに、その世界を再びやり直す…そんな馬鹿げたことが起こって良いはずが無い。ワシはケインが読んだ本を燃やしたくなった。それほどその本は馬鹿げている。

いや…。

そんな馬鹿げた事を望むケインは、やはり母親と再開したい気持ちがあっての事だろうと気がついた。

「その…Restartを使ってケインは母親に会いたいのか?」

「うん。自分の為に使えば…ね。僕は父上と泣かないって約束したから自分の為だけにRestartは使えないよ。でも、もしRestartの魔法が本当に存在してその魔法を使うときって”もうみんなの苦しむ姿を見たくない!!”っていうどうしようも無いときだと思う。」

「ケイン…」

「でさ、魔法マイスターのリョウじいならRestartの事を知ってるかな~って思ったんだけど、やっぱ作り話っぽいよね?」

「そうじゃ…な。空を飛んだり自分を作り出したり…という魔法はこれからの進化で出来なくもなさそうなんじゃ。治療する魔法パワーを別エネルギーに転換出来さえすれば、理論上空を飛ぶ力に変換することだってできる。しかしワシ達の住む世界を再設定することなんてのは…ちょっと信じられない魔法じゃな…」

「もし仮にあったとしても、すべて最初からやり直すなんて嫌だしね。リョウじいとの思い出が消えちゃうかもしれないし…」

「そうじゃな。ワシもエスターニアやレイラさん、ケインとの思い出がなくなるのは辛いな」

「女の子達が戦士っていう話は、なんか本当のような気がするんだけどな~」

「確かに、Restartの魔法に比べたら現実的かもしれんが…あくまで比べたら…の話じゃな。ワシやエスターニア、ケインは男じゃ。男は女を守らなければならん。女性の戦士など生まれさせてはならんし、危険な目に合わすことも許されん。そのためにはケインも男として強くならんといかんのじゃぞ」

「うん…そうだね…」

「まぁRestartの魔法については一応調べるだけは調べておこう。それに似た類似の魔法が開発されているかもしれんし、開発されていたらいたらでその開発者の思想は危険じゃからな。それじゃあケイン、ワシは帰るとするぞ」

「うん、わかった!ありがとね!また明日!!」

「うむ。またなケイン」

ワシはケインの家を後にした。

「リョウじい…。僕は母上を…守れなかったよ……」

翌日、ワシは早速Restartについて調べた。なんとも馬鹿げた魔法か…という感想しか思い浮かばなかった。

なるほど確かにRestartの概要についてはよくわかった。Restartの詠唱者は自分の記憶を引き継いだまま新しい世界を初めからやり直すことができる。些細な事柄に対して事実を変えることは可能らしいが、大きな結末を変えることは出来ない…らしい。もしワシがRestartした場合、エスターニアとの友好関係はワシの意思で変更することはできるがレイラさんが殺されてしまう運命は変えられない。人の生死という大きな事件は決して変えられないのだ。

Restartという魔法も馬鹿げているが、この効力も馬鹿げている。仮にやり直せるとしても結末が一緒ならなぜRestartする意味があるのだろうか…。全くもって希望の無い話だった。

合わせて女性が戦士になる話も調べてみたのだがRestartの魔法より信憑性があった。確かにディティーモにも勇ましい女性が数人いる。訓練を受ければ戦士にもなれるだろう。十分な武具を纏わせれば弱小な兵なら見事勝利を収めそうな予感もある。そういう点からも2人の戦士の話は伝説として名を残す程の説得力があったのだ。

10

「ケイン、Restartの魔法について少し調べてみたのじゃが…」

「使えるようになった?」

「いや。Restartは現実的な魔法じゃない。使えるか使えないか…という問題では無く、全く希望のカケラも無い絶望の魔法じゃ」

「そんな…絶望的なんて…」

「仮に実現したとして、初めからまた同じ歴史を繰り返すなんて、まるで希望が無いじゃないか。あれなら全く別の世界に飛ばされ新しい人生を歩み出したほうがまだましじゃ」

「でも、そうすると今までの仲間たちに会えなくなっちゃうんだよ!?リョウじいは父上と友達じゃ無くなってもいいの?」

「おいおい、Restartができる世界なんて想像もしたくないよ。仮にの話だよ。未知な世界より今を生きる事が大切なのじゃ。ケインは…」

ワシはケインがRestartにこだわる最大の理由を突きつけた。

「ケインは、Restartしてまでレイラさんに会いたいのか?」

「ぼ…僕は…」

「ケイン…。Restartに頼り切っては強くはなれん。Restartはいわば諦めの魔法じゃ。あの魔法に希望など…存在しない」

「でも…!僕は母上を守れなかった!!あのJG.クライの手から守れなかった!!Restartしてきっとあいつを…!あいつを殺してやりたいんだ!!」

ケインの心は深い悲しみに包まれていた。あれほど快活なケインがこれほどまで敵意をむき出しにした姿をワシは見たことが無い。いや、この姿は…まさにエスターニア
そのものと言っても良かった。父親に流れる戦士の血は、彼の奥深くそこに眠っていたのだ。

「ケイン…。今を…生き父上のようになりなさい。そうすれば母上もきっと喜ぶだろう」

「リョウじい…」

Restartより今を生きる。魔法など使わなくても良い時代が来るようにワシ達は未来に繋げなくてはならん。

そう…。絶望が来るより、もっと素早く…。

11

「エスターニアが…死んだ…」

伝令係の声は静かだったが深く響いたように聞こえた。明瞭に聞こえたその内容は信じ難いものだった。

「なぜ…?」

ワシは誰に問いかけるわけでも無く声が出た。同時にハルを探した。ハルもまた表情を暗くしてその報告を聞いていた

「ハル!お前がいながらなぜエスターニアが死ぬことになるんだ!!傷つくものを回復させるのがワシらの役目じゃろう!!」

ワシは力の限りハルの胸ぐらを掴んだ。ワシ達がしっかり回復に徹していれば人が死ぬなんてことはほぼ無かったからだ。

「いや、リョウちゃん…。げふげふ…、き…きいてくれよ…!」

「リョウ!!ハルはしっかりと自分の役目を果たしていたさ!その手を離さないか!」

仲間の声を聞いてワシは冷静になった。しかし…エスターニアほどの男がなぜ簡単にやられてしまうのか…?ワシには全く検討がつかなかった。

「JG.クライだ。あいつは本当に人間じゃない」

ハルがゆっくりと話し始めた。

「俺たちはバラミスとの戦闘に勝ったのだ。その流れで敵国バラミスへ駆け込んだ。しかし戦闘目的では無く、この戦争を終わらせようとするために交渉しにいったのだ。そして交渉の場に立ったのがJG.クライだった。やつは…やつは初めからまともな交渉を行う気なんて無かった。あろうことか…自国の子供を人質にとり戦争継続の要求をし始めたのだ!」

ワシは心底JG.クライが憎らしく思った。とてもワシ達と同じ血が流れているとは思えない。

「正直…。正直な話を言えば!俺たちの国の子供じゃない!だからその子を見殺しにして諸悪の根源であるJG.クライを討っても良かったんだ。終戦させるには…!でも、そんな事一瞬でも思った俺達がバカだった。エスターニアは次の瞬間、人質を救うために自分自身との人質交換を提案したのだ」

エスターニアの争いを収めたいという気持ちが痛いほど分かる行動だった。エスターニアこそ…本物の戦士だ。

「JG.クライは受けた。いやむしろ初めから俺たちの誰かを人質にして殺そうと考えたのかもしれん。俺たちが子供を見殺しに出来まいと計算した上での行動だったに違い無い。人質が交換された次の瞬間…。JG.クライの攻撃をまともに受けたエスターニアは…」

その先を言うものは誰もいなかった。認めたくない言葉が何より真実味を帯びていた。

バタン!

急に外の扉の音がした。この話を誰かに聞かれたのか…!?我々の英雄が失われた事を誰かの耳に入ったなら戦況に影響が…いや、それよりもケインに知られてしまっては…。いや…いつかは知らせなければ…しかし今は…。ワシは混乱していた。

しかしその混乱はすぐに収まった。話を聞いていただろうその人物は、ワシが良くしる少年の背中だった…。

12

「ケイン!」

ワシはすぐさま後を追おうとした。しかしハル達に取り押さえられた。

「リョウちゃん!今はダメだ!!戦闘態勢を整えないとバラミスの奴らすぐ攻め入ってくるぞ!!」

しかし…それも大事だがしかし…ケインは…!

「JG.クライはこの機を逃さない!あいつは戦いそのものを楽しんでいる狂人だ!ディティーモのみんなを守らないと!」

ワシはハルの言うことに従うしか無かった。ワシ達だけが傷を治療できる魔法使いなのだ。ハル1人だけ残して身勝手ができる状況では無かった。ワシは魔法という無力さを改めて思い知ったのだ。

13

案の定JG.クライ率いる軍隊が攻めてきた。こんな殺気立った軍隊進行は今までで一度も無かった。敵対勢力ではあるがバラミスの兵士達も自国の事と生きとし生けるすべての命に対して敬意を払っていた。この変貌はJG.クライのカリスマ性によるものなのか…?

「愚かな者たちよ。もう一度やり直そう。この世は絶望しか無い」

JG.クライがあたり一帯に響き渡る声でそういった。静かだがよく通る声だ。

「エスターニアのかたき!と言いたいところだが、我々はもうこの無益な争いに終止符を打ちたいと思っている!!どうしてその事に気が付かない!?忌まわしき長年の歴史を終わらせようじゃないか?」

兵士長がJG.クライの言葉をかき消す程の大声で言い放った。ワシ達の気持ちは一致していた。エスターニアのかたきは取りたい。だがこれ以上犠牲を出すわけにはいかないのだ。

「人は…もう絶望しか残されていない…なぜその事に気が付かない…」

JG.クライは魔導書を取り出し何かの呪文を詠唱し始めた。やつは魔道士だったのかと思うと同時に、その呪文を聞いた瞬間戦慄が走った。やつが唱えている呪文は魔道士の中で禁断とされている闇魔法だったからだ。

おぞましい叫び、雄叫びとも言える音をさせながら彼の魔導書から放たれた朱色の光線は私達の仲間を次々に薙ぎ払っていった。周りの建物も壊滅状態。戦闘不能は明らかだった。

「おい…、あんなの…って。アリかよ…」

「本当に、あいつの言う通り…俺達には…絶望しか残ってないんじゃ…。」

「いつまで経っても戦争は無くならない!悲しいことしか起こらない!!ならいっそ…!この世界を…!」

マズイ…。戦士達がJG.クライの闇に飲み込まれ始めている。

「怯むな!我々は未来の為に戦わねばならない!!討て!やつを討て!」

兵士長の勇ましい鼓舞も虚しく、我々の攻撃はバラミスの軍勢に届かない。なにせやつ等は遠い場所から闇魔法を放ってきている。こちらが攻撃を行える距離まで詰め寄るのが困難すぎるのだ。弓矢などなんの役にも立たなかった…。

14

闇夜を照らす赤…。炎が燃え盛る街並みはこの世の終わりを彷彿させるに十分な演出だった。

ワシ達には何も出来なかった。兵士長の勇ましさも徐々に失われていった。

このような惨事を招いたのは、間違いなくワシの力不足によるものだった。JG.クライがあのような闇魔法を実現できるなんて思いもしなかった。あの逆の事をワシができるようになっていればこの惨事を食い止められたかもしれん…。ワシはワシ自らの可能性を、イマジネーションを放棄していたのだ…。

ワシはふと空に輝くサザンクロスを見た。エスターニアよ…お前との約束を守ることが出来なかった…。ケインの事も守り切ることが出来なかった…。ワシは愚かで無力じゃ…。

「何を言ってんだよお前は!」

その時、サザンクロスからエスターニアの声が聞こえた。

「お前がJG.クライの魔法を使ったら俺がぶん殴っていたよ!あんな人々を悲しませるような魔法なんてあっちゃいけねぇ。俺は、お前達の使う魔法に助けられてきたんだ。」

「エスターニア…!」

「それにな、お前ほどの魔法使いならあいつ程度の魔法は簡単に習得できるんだよ!リョウだから使わなかっただけさ。心の弱いやつが強い魔法を使いたがる。」

「リョウさんにはこの世界を救う力があると信じてるわ!」

レイラさんの声も聞こえる。

「邪な力に負けないで!あなた達が諦めた時本当に世界は無くなってしまうの…!」

「一発、あいつにぶちかましてやれ!!」

ワシにはハッキリ二人の声が聞こえた。エスターニア…レイラさん…。わかったよ。

「ハル…、禁断の攻撃魔法を使おう」

15

「リョウちゃん…そんな事俺たちにできるわけが…!?」

「確かにワシ達魔道士が使える魔法は回復魔法のみ。攻撃魔法は書物だけのおとぎ話の魔法じゃった。しかしJG.クライは実際に撃ってきている。やつに撃ててワシ達に撃てないはずがない。」

「でも…そんないきなり…どうやって使えばいいんだ?」

「ワシ達が回復魔法を使う時、回復を念じていただろう?あの念を相手への攻撃に向けたら使えるんじゃないか…?」

「そんな…やけっぱちな…。そんな事で攻撃魔法が使えたらどんなに楽か…?」

「でも今までやってきたことも無かっただろう?そりゃそうだよな。相手を攻撃しようなんて思っても見なかったもんな。でも悔しいだろ…?あんな狂人が様々な魔法を使えることに憤りを感じるだろう。二人で…あいつを倒そう」

「…そうだな…。リョウちゃん!俺たち魔道士が…!この世界を救おう!」

ワシ達は少し興奮していた。今まで戦士だけがこの世界を良きものにできると思っていた。ワシ達魔法使いはあくまでサポート役だけだと。しかしイマジネーションを育むだけで世界を変えることができるなんて、この歳になって気がつくと思わなかったのだ。

「よし、二人の力を使って攻撃魔法を完成させよう!」

相変わらずバラミスの軍勢の攻撃がやまずにいる。持ちこたえているだけで精一杯な状況だ。JG.クライの闇魔法を封じない限り我々の勝利は無いだろう。

16

ワシ達は書物から学んだ攻撃魔法の呪文を詠唱した。果たしてこれでうまくいくとは思わなかったがもうここまで来たらイマジネーションの力だけが頼りだ。

「リョ…リョウちゃん!この力は…!!」

凄まじい体への熱を感じる。回復魔法とは全く別の現象だった。これが攻撃魔法を使うという事か!?

「…くっ!た…絶えられない…!!」

次第に体にかかる負担が大きくなってきた。これが攻撃に転じるパワーの代償ということなのか…。しかし…まだまだ力を貯めなければ…

「ハル!まだだ!まだ絶えて…攻撃力を高めるんじゃ…!!」

「ぐ…ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」

この一撃…この一撃をやつに食らわすことができれば…、きっとこの戦争は終わるに違いない!!決着の一撃を…今やつに!!

ドクン…

おかしい…

攻撃魔法を放つ瞬間…ワシは再び戦慄を感じた。

長く詠唱していた時間、JG.クライはなぜ反撃してこなかったのだろう…。戦闘中とは言えこの魔力の解放をやつが見逃すはずが無い…。そう思いながらやつの顔を見ると、どこか余裕の表情…いや、卑しい笑みを浮かべていた。

やつの持っている書物…ワシ達が見ていた攻撃魔法の書物…ワシ達の魔法を止めなかった理由…

まさか

「行くぞ!リョウちゃん!!」

「ハル!まてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

17

大きな爆発音らしきものと拡散した煙がワシ達の周りを包んだ。攻撃魔法を撃った事がないので「こんなものか…?」という疑問が先に浮かんだ。次第にJG.クライが浮かべていた笑みの違和感に戦慄を覚えた。ワシ達は、もしかしてとんでもない過ちをしていたのでは無いか…と。

「ははは…ふはははははははははは!!」

忌々しいJG.クライの笑い声が煙の外から聞こえる。なんとも鬱陶しい笑い声だ。

「これで世界の終わりが見えた。さぁすべてを焼き払え…ドラゴンよ!!」

だんだん煙が履けてきた。そこに現れたのは…朱色の鱗をまとった巨大な生物だった。

「な…なんだ…?これは…!?」

「この世のすべてを破壊する王とも呼べる存在。ドラゴンだ。ドラゴンはなんの感情も持たぬまますべてを焼き尽くす。ふははははは!」

「バカな!ワシ達の攻撃魔法は一体どこに…?」

「まだ気が付かないのかい?これは君たちが”召喚”したのだよ」

「しょう…かん?」

「多くを説明しても理解できないだろうが…完全なドラゴンを呼び寄せるためには強力な回復魔法が必要なのだよ。私に回復魔法は使えなくてね…どうしても君たちの力を利用したかった。」

「俺達の魔力を利用したということか!?」

「ハル…。違う。ワシ達の詠唱していた呪文、あれそのものが”召喚”という魔法の呪文じゃったのだ…」

「…!だって、あの書物は…!!」

「ワシ達が読んでいた書物、あれを書いたのが…JG.クライだった…ということじゃろう…」

「そのとおり。書物を読めば聡明になれると勘違いする魔法使いの多いこと多いこと。正しい知識は実践してこそ得られる。」

憤りを感じている後ろでもドラゴンとやらの炎が止むことは無い。

「この世を…世界をやり直すには、まずは破壊が必要なのだぁ!」

ワシは…やはり愚か者じゃった…。

18

JG.クライの言う通り…この世界は…もうダメだ。

万策尽きた…。ワシよりやつの方が魔法使いとしての力が上回っていたのだ。悔しいが認めざるを得なかった。

もうディティーモの街は見るに耐えなかった。炎・崩壊・悲鳴・狂乱…。この世のものとは思えない景色…これ以上の絶望が無いディティーモに追い打ちをかけるドラゴンの炎。その瞬間ワシはケインが言っていたRestartの魔法を思い出した。

なるほど…ケインの言う通り、やり直したい気持ちがよくわかった。もしやり直せるなら…やつを超える魔法使いになってこんな最悪の結末を迎えないように対処するだろう。Restartの魔法は結末は変わらないと書かれていたが、そのルールすらもワシが変えてみせる。Restartができれば!

こんな絶望に溢れた星など…Restartされるべきじゃ!

ワシはこれまでに無い強さでRestartの魔法を念じた。方法も呪文も分からない。でも闇雲に念じてみた。もうおまじないと言われてもおかしくない。それしか方法は無かった。どうか…、この世界をやり直せるように…!!Restartが出来るように!!

Restart

真っ白になるその瞬間、JG.クライの叫びが聞こえた。何を言っていたのかはわからなかった。

ワシはRestartの成功を確信した。今までに無いこの感じ…真っ白ですべてを包み込むこの感じはきっとこの世界をやり直せるに違いない。

Restartできる…と思いながらも気がかりはケインのことだった。やり直した世界で、ケインはもっとたくましく生きられるだろうか。ワシはケインに的確なアドバイスができるだろうか…。エスターニア・レイラさんといつまでも暮らしていけるだろうか…。

しかしRestartしたならもう問題は無い。すべて最初からやり直せばよいのじゃ。ワシはワシの記憶を引き継げるわけじゃから、きっとすべて上手くいくに違いない。それを思うと希望が湧いてきた。

ケインよ…。きっと次は上手くくはずじゃ…。Restartの魔法だってきっと教えられるはず…。

エピローグ

リョウのRestartは結果的に失敗に終わった。リョウは記憶を引き継いだまま別の世界をやり直すことになった。

その世界はエスターニアもケインもレイラもハルも…全員いなかった。

もともといた…とも言えるリョウの世界が一体どうなったのか…。リョウがそれを心配しても全く意味が無いのだ。なぜなら住む世界が違うから。だからリョウ達が召喚したドラゴンがどうなったのか?JG.クライはディティーモを制圧できたのか?戦争は終結したのか…。その結末は誰にもわからないのだ。

これからリョウはいろいろな世界へ旅立つ。希望と絶望を繰り返しながら…。

The end to The end…

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4 件のコメント

  • 遼爺役の多田野曜平さんはルパン三世に登場して余所者が銃を持つ事は許さず半殺しにしてから循環器用聴診器スピリットカーディDXマルチブラックに掛けて一時期はメスで殴り込もうとして次元大介に制止された外科医師のリービアに手術をさせて、冗談は絶対に言わない早撃ちの次元大介の忠告を無視して部下8人に射撃命令を出して死線を突破した数が多い次元大介には逆に同時討ちにさせられて拳銃も奪還されて命乞いをしつつも早速約束を破って背後からマシンガンを乱射してシャングリラの下敷きにされたエリク・オルジャーニーやドラゴンクエスト8にてポルトリンク港のボスとして出現して最初は必ず火炎の息を発射するからある程度はレベルを上げてから挑むべきで、勝利後は神秘のビスチェの錬金素材となる市販品の金のブレスレットをくれて、大した経験値でも無いのにすぐに逃げ出して弱いのにスカウトモンスターも含むプチアーノンの父親でも有るオセアーノンやドラゴンクエストヒーローズ2にて魔王ザラームが化けた預言者がダラル王に与えた魔剣で洗脳されて1回目は竜王極のプリズニャンと同じく特別製のパペットマンを召喚して踊らせて2回目はトロフィーを取る為にも先にレベルを40迄上げてから改造コードを使った方が良いアリーナ&クリフトを仲間にする為に3連戦の2回目に戦うフェルノーク王と悪霊の神々の試練1回戦でモンスターコイン収集のバズズ役による3つのキャラクターをなさっていたのは知ってます。

    ルパン三世に登場して冗談は絶対に言わない早撃ちの次元大介の忠告を無視して命乞いをしつつも早速約束を破って背後からマシンガンを乱射してシャングリラの下敷きにされたエリク・オルジャーニー
    https://kissanime.ru/Anime/Lupin-III-2015/Episode-004?id=116527&s=default

    外科医師のリービアが肩に掛けている循環器用聴診器スピリットカーディDXマルチブラック
    http://drmrt.com/%EF%BD%93%EF%BD%90%EF%BD%89%EF%BD%92%EF%BD%89%EF%BD%94カーディー%EF%BD%84%EF%BD%98%EF%BC%88マルチ%EF%BC%89-ck-ss747pf%EF%BE%8C%EF%BE%9E

    ドラゴンクエスト8にてポルトリンク港のボスとして出現して最初は必ず火炎の息を発射して勝利後は神秘のビスチェの錬金素材となる市販品の金のブレスレットをくれるオセアーノン

    • コメントありがとうございます!掲載幅の関係上、編集して掲載させていただきます。

      遼じい役の多田野曜平さんはとても素敵な方だと思います。Twitterでリプを送ってもきっちり返してくれる方なのでそれだけでファンになってしまう感じです。

      この小説、あと2作続きがあるように構成されていますので、お時間あるときにお読みいただければと思います。

      ありがとうございました!

  • 異世界ファンタジーっぽい物語はもともと好きなので、とても楽しく読ませていただきました!!『リョウ』『ハル』は片仮名にすると異世界にもすんなり馴染みますね☆

    そしてやっぱり最大のポイントは“魔導書を持つJG.クライ”ですね!いや~~、彼の御方への愛をビシバシ感じましたよ!!(笑)

    スタプリの感想から始まってこんな世界まで広げてしまうなんて…本当に脱帽です\(◎o◎)/
    こちらのブログを偶然見つけて読ませていただくようになって楽しみが増えました♪ありがとうございます!

    • ララルン☆さん、いつもコメントありがとうございます!

      あまりプリキュアと関係ない話ですがお読みいただいてとてもうれしいです!少しだけでも…とプリキュアのネタを入れてはいるのですが、JG.クライは蓋を開けてみれば凶悪な奴になってしまいましたね。

      実はあと2作ほど続きがありますので最後までお読みいただければ幸いです。

      ありがとうございました!

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